ガイドライン・自己評価

放課後等デイサービスガイドライン

総則

(1)ガイドラインの趣旨

放課後等デイサービスは平成24年4月に児童福祉法(昭和22年法律第1 64号)に位置づけられた新たな支援であり、その提供が開始されてから間ももや保護者のニーズは様々で、提供される支援の内容は多種多様であり、支援の質の観点からも大きな開きがあるとの指摘がなされている状況にある。このような状況を踏まえて、平成26年7月に取りまとめられた障害児支援の在り方に関する検討会報告書「今後の障害児支援の在り方について」において、「支援の一定の質を担保するための全国共通の枠組みが必要であるため、障害児への支援の基本的事項や職員の専門性の確保等を定めたガイドラインの策定が必要」、「特に、平成24年度に創設した放課後等デイサービスについては、早期のガイドラインの策定が望まれる」との提言がなされたところである。
現在の放課後等デイサービスの提供形態の多様性に鑑みれば、「放課後等デイサービスはこうあるべき」ということについて、特定の枠にはめるような形で具体性をもって示すことは技術的にも困難であり、支援の多様性自体は否定されるべきものではない。しかしながら、提供される支援の形態は多様であっても、障害のある学齢期の子どもの健全な育成を図るという支援の根幹は共通しているはずであり、したがって、放課後等デイサービスを提供する事業所が、その支援の質の向上のために留意しなければならない基本的事項もまた共通するはずである。
本ガイドラインは、以上のような考えに基づき、放課後等デイサービスを実施するに当たって必要となる基本的事項を示すものであるが、ここに記載されている内容を機械的に実行していけば質の高い支援提供が確保されるというような、手取り足取りの事業マニュアルではない。各事業所は、本ガイドラインの内容を踏まえつつ、各事業所の実情や個々の子どもの状況に応じて不断に創意工夫を図り、提供する支援の質の向上に努めなければならない。
本ガイドライン並びに別添の「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」及び「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」は、放課後等デイサービス事業所における自己評価の際に活用されることを想定しており、各事業所は自己評価の結果を踏まえて、事業運営の改善を図るとともに、結果についても利用者や保護者に向けて公表するよう努めなければならない。
また、上述のとおり、放課後等デイサービスは、その提供が開始されてから間もなく、行われている支援の内容は多種多様であり、現在においても日々新たな支援形態が生み出されているものと想像される。このような状況に鑑みれば、本ガイドラインが多くの専門家、関係団体等の協力を得て策定されたものであるにしても、その内容については不断の見直しによる改善が図られるべきものである。各事業所が本ガイドラインを活用して自己評価を実施するに際して、本ガイドライン自体の問題点に気づくことが想定されるところであり、今後、そうした気づき等を丁寧に拾いあげて本ガイドラインを更新していくことが求められる。各事業所の不断の努力による支援の質の向上とあいまって、本ガイドラインの内容もまた向上させていかなければならないものである。

(2)放課後等デイサービスの基本的役割

○子どもの最善の利益の保障

放課後等デイサービスは、児童福祉法第6条の2の2第4項の規定に基づき、学校(幼稚園及び大学を除く。以下同じ。)に就学している障害児に、授業の終了後又は休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与することとされている。
放課後等デイサービスは、支援を必要とする障害のある子どもに対して、学校や家庭とは異なる時間、空間、人、体験等を通じて、個々の子どもの状況に応じた発達支援を行うことにより、子どもの最善の利益の保障と健全な育成を図るものである。

○共生社会の実現に向けた後方支援

放課後等デイサービスの提供に当たっては、子どもの地域社会への参加・包容(インクルージョン)を進めるため、他の子どもも含めた集団の中での育ちをできるだけ保障する視点が求められるものであり、放課後等デイサービス事業所においては、放課後児童クラブや児童館等の一般的な子育て支援施策を、専門的な知識・経験に基づきバックアップする「後方支援」としての位置づけも踏まえつつ、必要に応じて放課後児童クラブ等との連携を図りながら、適切な事業運営を行うことが求められる。さらに、一般的な子育て支援施策を利用している障害のある子どもに対して、保育所等訪問支援を積極的に実施する等、地域の障害児支援の専門機関としてふさわしい事業展開が期待されている。

○保護者支援

放課後等デイサービスは、保護者が障害のある子どもを育てることを社会的に支援する側面もあるが、より具体的には、

  1. 子育ての悩み等に対する相談を行うこと
  2. 家庭内での養育等についてペアレント・トレーニング等活用しながら子どもの育ちを支える力をつけられるよう支援すること
  3. 保護者の時間を保障するために、ケアを一時的に代行する支援を行うこと

により、保護者の支援を図るものであり、これらの支援によって保護者が子どもに向き合うゆとりと自信を回復することも、子どもの発達に好ましい影響を及ぼすものと期待される。

(3)放課後等デイサービスの提供に当たっての基本的姿勢と基本活動

① 基本的姿勢

放課後等デイサービスの提供に際しては、子どもの最善の利益を考慮し、人権に配慮した支援を行うために、子どもの支援に相応しい職業倫理を基盤として職務に当たらなければならない。
放課後等デイサービスの対象は、心身の変化の大きい小学校や特別支援学校の小学部から高等学校等までの子どもであるため、この時期の子どもの発達過程や特性、適応行動の状況1を理解した上で、コミュニケーション面で特に配慮が必要な課題等も理解し、一人ひとりの状態に即した放課後等デイサービス計画(=個別支援計画)2に沿って発達支援を行う。
放課後等デイサービスでは、子どもの発達過程や障害種別、障害特性を理解している者による発達支援を通じて、子どもが他者との信頼関係の形成を経験できることが必要であり、この経験を起点として、友達とともに過ごすことの心地よさや楽しさを味わうことで、人と関わることへの関心が育ち、コミュニケーションをとることの楽しさを感じることができるように支援する。また、友達と関わることにより、葛藤を調整する力や、主張する力、折り合いをつける力が育つことを期待して支援する。基本活動には、子どもの自己選択や自己決定を促し、それを支援するプロセスを組み込むことが求められる。
また、日常的な子どもとの関わりを通じて、保護者との信頼関係を構築し、保護者が子どもの発達に関して気兼ねなく相談できる場になるよう努める。
放課後等デイサービスは、子どもに必要な支援を行う上で、学校との役割分担を明確にし、学校で作成される個別の教育支援計画3等と放課後等デイサービス計画を連携させる等により、学校と連携を積極的に図ることが求められる。
また、不登校の子どもについては、学校や教育支援センター、適応指導教室等の関係機関・団体や保護者と連携しつつ、本人の気持ちに寄り添って支援していく必要がある。

1 適応行動とは、年齢相応の周囲の期待の範囲内の行動(社会的な活動への参加、コミュニ ケーション、運動など)のこと

2 放後等デイサービス計画とは、放課後等デイサービスを利用する個々の子どもについて、その有する能力、置かれている環境や日常生活全般の状況に関するアセスメントを通じて、 総合的な支援目標及び達成時期、生活全般の質を向上させるための課題、支援の具体的内 容、支援を提供する上での留意事項などを記載する計画のこと。放課後等デイサービス事 業所の児童発達支援管理責任者が作成する。

3 個別の教育支援計画等とは、障害のある子どもの一人ひとりのニーズを正確に把握し、 教育の視点から適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒 業後までを通じて一貫して適確な支援を行うことを目的として策定される計画のこと。

② 基本活動

①の基本的姿勢を踏まえ、子ども一人ひとりの放課後等デイサービス計画に沿って、下記の基本活動を複数組み合わせて支援を行うことが求められる。

ア 自立支援と日常生活の充実のための活動

子どもの発達に応じて必要となる基本的日常生活動作や自立生活を支援するための活動を行う。子どもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする。将来の自立や地域生活を見据えた活動を行う場合には、子どもが通う学校で行われている教育活動を踏まえ、方針や役割分担等を共有できるように学校との連携を図りながら支援を行う。

イ 創作活動

創作活動では、表現する喜びを体験できるようにする。日頃からできるだけ自然に触れる機会を設け、季節の変化に興味を持てるようにする等、豊かな感性を培う。

ウ 地域交流の機会の提供

障害があるがゆえに子どもの社会生活や経験の範囲が制限されてしまわないように、子どもの社会経験の幅を広げていく。他の社会福祉事業や地域において放課後等に行われている多様な学習・体験・交流活動等との連携、ボランティアの受入れ等により、積極的に地域との交流を図っていく。

エ 余暇の提供

子どもが望む遊びや自分自身をリラックスさせる練習等の諸活動を自己選択して取り組む経験を積んでいくために、多彩な活動プログラム4を用意し、ゆったりとした雰囲気の中で行えるように工夫する。

4 活動プログラムとは、事業所の日々の支援の中で、一定の目的を持って行われる個々の 活動のこと。子どもの障害特性や課題、平日/休日/長期休暇の別等に応じて柔軟に組み 合わせて実施されることが想定されている。

(4)事業所が適切な放課後等デイサービスを提供するために必要な組織運営管理放課後等デイサービス事業所が適切な支援を安定的に提供することにより、障害のある子どもの健全な育成に貢献するとともに、子どもや保護者の満足感、安心感を高めるためには、組織運営管理を適切に行う必要がある。

① 適切な支援の提供と支援の質の向上

事業所の運営方針や、放課後等デイサービス計画、日々の活動に関するタイムテーブル5や活動プログラムについて、その Plan(計画)、Do(実行)、 Check(評価)、Act(改善)で構成される一連のプロセス(PDCAサイクル)を、設置者・管理者、児童発達支援管理責任者、従業者(児童発達支援管理責任者以外の従業者をいう。以下同じ。)(以下「従業者等」と総称する。)の積極的な関与のもとで繰り返し、事業所が一体となって不断に支援の質の 向上を図ることが重要である。

適切な支援を安定的に提供するとともに、支援の質を向上させるためには、支援に関わる人材の知識・技術を高めることが必要であり、そのためには 様々な研修の機会を確保するとともに、知識・技術の習得意欲を喚起することが重要である。

子どもの発達支援には、保護者や学校をはじめとする様々な関係者が関与しており、それらの関係者と密に連携し、情報を共有することにより、子どもに対する理解を深めるとともに、支援の輪の中において放課後等デイサー ビス事業所に期待される役割を適切に認識することも、適切な支援を提供し、支援の質を高めていく上で重要である。

5 タイムテーブルとは、1日の時間帯別活動を示す日課表のこと。

② 説明責任の履行と、透明性の高い事業運営

子どもや保護者の満足感、安心感を高めるためには、提供する支援の内容を保護者とともに考える姿勢を持ち、子どもや保護者に対する丁寧な説明を常に心がけ、子どもや保護者の気持ちに寄り添えるように積極的なコミュニケーションを図ることが重要である。

子どもが健全に発達していくためには、地域社会とのふれあいが必要であり、そうした観点からは放課後等デイサービス事業所が地域社会からの信頼を得ることが重要であるが、そのためには地域社会に対して事業に関する情報発信を積極的に行う等、地域に開かれた事業運営を心がけることが求められる。

③ 様々なリスクへの備えと法令遵守

子どもや保護者が安心して放課後等デイサービス事業所の支援を受け続 けられるようにするためには、事業を運営する中で想定される様々なリスク、例えば、子どもの健康状態の急変、非常災害、犯罪、感染症の蔓延等に対する、訓練や対応マニュアルの策定、関係機関・団体との連携等により、日頃から十分に備えることが重要である。

子どもの虐待の未然防止や個人情報保護を徹底する等、関係法令を確実に遵守することは、子どもの権利擁護の観点や、子どもや保護者を継続的に支援していく観点からも非常に重要である。

自己評価結果